不動産鑑定士のブログ 〜坂の上の雲〜

更新頻度が比較的高い不動産鑑定士のブログです。ためになる情報を発信していきます(たまに下ネタも。)。

AM会社のしごと(収益予想ってどうやってやるんだ)

こんにちは、城山です。

連休も終わりましたね。

今日からまたがんばりましょう。

 

年末はすぐそこです。

 

■運用サイドの資料

前回は、

「運用なんて簡単」と言いましたが、

上場ファンドの運用会社で、

実務レベルでわりと面倒だったのは、

「次期予測」

ですね。

 

しかも、保有アセットが多ければ多いほど、

予想するのは難しくなります。

 

ここは鑑定理論の出番です。

 

ケーススタディ

ここでもまた、

天下の日本ビルファンド投資法人様を

参考にさせていただきます。

 

こちらの決算短信を御覧ください。

https://www.nbf-m.com/nbf/ir/files/regurer/20180815_34thPeriod_tanshin.pdf

2018年8月に、

 

2018 年12 月期(2018 年7月1日~2018 年 12 月 31 日)の運用状況と、

 

2019 年6月期(2019 年1月1日~2019 年6月 30 日)の運用状況を

開示しています。

 

いわゆる「2期開示」ってやつですね。

 

8月時点で保有アセット数が72物件もあり、

だいたい1年先の予想をする、

どうでしょうか、

簡単そうに見えますか?

 

不動産鑑定士は10年予想している

鑑定理論で収益還元法のうち、

DCF法ってありましたよね。

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DCF法とは、

「連続する複数の期間に発生する純収益

及び復帰価格を、

その発生時期に応じて現在価値に割り引き、

それぞれを合計する方法」

ってやつですね。

 

不動産鑑定士やファンドに

関わっている人だと、

DCF法って特段難しいものでもないと

思います。

 

みなさん、演習問題とかで、

DCF法を使ったりしていると思いますが、

計算期間はだいたい10年でしたよね。

 

ファンドは、

出口が5年だったり、

10年だったりします。

 

そのファンドの役割次第、ですね。

 

■予想が必要な理由

なぜ予想が必要なのでしょうか。

 

そりゃ投資家や金融機関に

説明するためですね。

 

どれくらいのリターンがあるかどうか

わからないのに

投資・出資してくれる人はいません。

 

どれくらいのリスクがあるのか

わからないのに、

お金を融資してくれる金融機関はありません。

 

なので、売上や配当がどれくらいになるのか、

今後はどのような営業利益が

見込めるのかなど、

説明する必要があります。

 

■総収益予想

総収益の予想ですが、

最初は誰かの見よう見まねでいいと思います。

 

今後の稼働率

テナントの入替え、

賃料の改定(値上げか値下げか)

とかを、

1年分くらい予想ですね。

 

こちとら不動産鑑定士

10年くらいの収益予想を

やってきているわけですが、

その10年、

ぶっちゃけ適当ですよね笑

もちろん、ちゃんと説明はできるように

していると思います。

辻褄が合うように。

 

でも10年後のことなんて

誰もわからないですよね。

わかるなら仕事なんかやらずに

自分で投資でもしてればいいんですから笑

 

賃料20年固定のシングルテナントとか、

底地や借地権とかならまだわかりますが。。

 

ホテルとか毎日値段変えるじゃないですか。

今日は2万だけど、

週末は5万、とか。

 

売上連動の商業施設とか、

季節によって売上変わるじゃないですか。

 

そのあたりをどうやって予想するかが、

不動産鑑定士の知識と経験、

運用担当者の腕の見せどころでは

ないでしょうか。

 

■総費用の予想

鑑定理論どおりです。

ちょっとエクセルの技術が必要ってくらい

ですね。

演習問題だと、

「これは収益の●%とする。」

とかだったと思いますが、

世の中にはいろんな不動産があるので、

ケース別に対応する必要はあります。

 

減価償却(償却前の純収益を求める場合には、計上しない。)

これは、エクセル計算できますね。

対象不動産が鉄筋コンクリなのかとか、

構造で償却年数が違うので、

気をつけましょう。

 

維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)

これは、PM会社のPMfeeとか、

リーシングの際の仲介手数料とか、

オーナー負担工事とか、

いろいろと想定する必要があります。

 

公租公課(固定資産税、都市計画税等)

たまに税制とか変わっちゃったりするので、

ウォッチしておく必要がありますよね。

 

損害保険料等の諸経費等

これはあまり変動しないはずですが、

最近大規模災害が多いので、

アセットの住所によっては

変動するかもですね。

 

■工事 

予想するときは、

でかい金額が発生する工事関係に

注意する必要があります。

特に、

保有期間中の大規模修繕費等の費用の発生時期に留意する必要があります。

 

また、大規模修繕費等の費用については、

当該費用を毎期の積み立てとして計上する方法と、

実際に支出される時期に計上する方法

がありましたね。

 

このあたりは理論のまんまです。

 

工事費用については、

エンジニアリングレポートを参考にしたり、

PM会社とかが作ってくれる修繕計画など、

資料があるのでそこから数字を

引っ張ってきます。

 

実際に支出される時期の予測は、

対象不動産の実態に応じて適切に行う必要

がある、ってのも、理論どおりです。

  

■おわりに

城山もシコシコと1年分の予想

とかやっていましたが、

めんどくさいのは、

予想中に新しい物件を買うことになっちゃうとき

ですね。

 

まあその物件の純収益を予想すればいいだけですが、

「その物件がいつポートフォリオに追加されるか」

で、計算期間がことなるので、

なんかめんどくせーなぁ、

と思っていました。

 

世の中のファンドは、

長く予想をやってきているので、

だいたい当たります。

外れたとしても、誤差の範囲内です。

 

それに私はエクセルで計算していましたが、

たぶんいまは、

全部、全自動で計算してくれるシステムがあるはずです。

 

普段の運用と、

エクセルをシコシコやって予想して、

信用を積み上げて、

ようやくアクイジションのしごとです。 

 

ここまで書いて、

「わりと真面目に仕事してきたなぁ笑」

と思いました。

 

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