こんにちは、城山です。
不動産に関わっている人間全員が驚く事件が、
連日報道されていますね。
積水ハウスから63億円をだまし取った「地面師」の恐るべき手口(伊藤 博敏) | 現代ビジネス | 講談社(1/3) https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52480
■犯人の地面師
地面師とは、土地所有者に成り済まし、
勝手に不動産業者などに売り渡して代金をだまし取る人物です。
グループを形成していることが多く、
身分証や印鑑登録証明書など書類を偽造する役、
虚偽の申請書類で土地登記する役、
土地所有者に成り済ます役などが関与し、
相手をだまします。
■事件になった場所
五反田駅から徒歩数分です。
赤枠でくくった場所です。
なんどか前を通ったことがありますが、
なんか薄気味悪いところだなぁ
と思っていました。
昔は
「海喜館(うみきかん)」
という旅館だったみたいですね。
■土地の権利者
「売りに出されない土地」
ってことで、
所有者さんが「意地でも売らない」といって
マーケットに出てきては消え、
出てきては消え、
の土地だったようです。
■地面師の手口
簡単にまとめると、
犯行グループは、
土地の権利書や印鑑証明、健康保険証などを偽造。
土地所有者が入院中に、
偽の所有者、
仲介役としての地面師、
買主としての積水ハウスの3者との間で売却話
無断で鍵を付け替えて、
積水ハウス担当を現地案内し、偽造した一連の書類を含め、
真の所有者であると信じ込ませる。
■概算してみた
事件の土地ですが、一等地です。
2,000㎡の土地ってことは、
㎡単価が4,150,000円だとすると、
約83億円ですね。
これはあくまで地価公示からの推定価格ですので、
「取引価格」となると、
100億円は超えるでしょう。
いまの好調なマーケットで、
鑑定評価額で売却する人はいないでしょう。
少しでも釣り上げて売却するはずです。
そのための仲介ですからね。
売却価格が高騰すれば、仲介手数料も上がります。
100億円の案件だと、
3%でも3億円です。
■なぜ積水ハウスは騙されたのか
積水ハウスはつぎのように発表しています。
分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告 chrome-extension://mhjfbmdgcfjbbpaeojofohoefgiehjai/index.html
詳細は内容を御覧いただきたいのですが、
一部抜粋すると、
「取得を起案した東京マンション事業部に対して、
マンション事業本部がリスク感覚を発揮すべきところ、
その役割が果たされませんでした。」
起案部署と、承認部署が違ったんですね。
「本社のリスク管理部門においても、
ほとんど牽制機能が果たせなかったと考えられます。」
本社の審査部門も、偽造が見抜けなかった、と。
「売買契約締結時には所有権移転請求権の仮登記も実現しているといった事情」
これもわかります。
■仮登記とは
仮登記とは登記の「順位」を予約する登記です。
仮に所有権移転仮登記がある不動産を購入し、
買主が自分の名前を所有者として登記したとします。
そしてその後、
仮登記に基づいた所有権移転の本登記がされると、
買主の順位よりも、
前の順位を予約していた仮登記に基づく本登記が優先するため、
買主への所有権移転は否定されることになってしまうのです。
仮登記に基づく本登記が優先する、
てことは、どういうことか。
積水ハウスが仮登録できたってことは、
積水ハウスが、事件の土地をほぼ手に入れたと同然、
と思ってしまうのもやむを得ないのではないでしょうか。
■仮登記後
仮登記後に本物の所有者から再三、
「提出された書類は全て偽造」
などとする内容証明を複数回、
積水ハウスに送っていたようです。
指摘があったのに、積水ハウスは
「取引妨害の嫌がらせ」
として無視してたみたいです。
へんなやつが文句言ってる、
くらいにしか思ってなかったのでしょうね。
「登記を完全履行することによって沈静化する」
と考え、本登記に向けて残金約49億円を支払ってしまいました。
しかし、法務局での所有権の移転手続き中に、
印鑑証明などの偽造が発覚。
本登記はなされず、
積水ハウスは土地を取得できなかったので、
事件公表に至った、
という流れです。
■内輪もめ
発覚後も内輪もめがあったようです。
責任をめぐり、
当時社長だった阿部俊則氏(現会長)と会長だった和田勇氏が対立。
今年1月の取締役会で互いに解任動議を提示し、
和田氏が辞任するなど、社内の混乱を招いた。
■個人的な意見
いま、都心にはいい土地がないです。
まず、いい土地が見つからない。
見つかったとしても、
超高くてマンション開発しても採算が合わない、
権利関係が複雑でまとめられない、
所有者が反社会的勢力で取引できない、
などの理由で、買うことができません。
一方会社のサラリーマンとしては、
ノルマ
があります。
投資の世界では、
お金がある以上、
なにかに使わなければなりません。
口座にあるだけでは、
それが何十億円であっても、
運用しない限り増えません。
目減りします。
だから、
「今期100億円投資の予算達成できる。
しかも案件は都心の一等地。
100億円を超えそうな案件なのに、
70億円弱で取得可能。
仮登記できたんでしょ?
ここは、、是が非でも買っておきたい!」
と思う気持ちは、おなじサラリーマンとしてわかります。
どっかの恐ろしい銀行にも、厳しいノルマがありましたね。
スルガ銀行不適切融資1兆円がヤバい理由を徹底解説! - ちびくじらの得する生活 http://www.chibikujira.com/entry/surugabank-fusei-financing
■取引マニュアル
当然、会社ですから、
売買契約締結までのマニュアルなど、
整備されているはずです。
従業員も、マニュアルに従って仕事をして、
例外が発生したときは、
ケースバイケースで対応したはずです。
で、偽造されてはいたものの、
必要な書類は提出され、
眼の前で解錠し、
現地案内されれば、
信じてしまうのではないでしょうか。
しかも、仮登記までできちゃったのです。
■原因
原因を特定することは難しいですが、
・不動産マーケット(土地価格高騰)
・不動産会社の働き方(厳しいノルマ)
・不動産売買の仕組み(仮登記とか、偽造できる書類とか)
ですね。
地面師を排除するには、
いまの不透明は不動産市場をオープンにするとか、
ブロックチェーンを導入するとか、
地面師の賢さの、更に上を行く仕組みを考えないといけませんね。
では。