こんにちは、城山です。
今日は新規上場です。
ファンドのファイナンスサイドでは
かなり大きめのイベントであるIPOについて。
■IPOとは
日本語で、新規株式公開です。
新規上場ですね。
イニシャルパブリックオファリングの
頭文字ですね。
IPOを経験したことがあるというだけで、
人材としては貴重な存在ではないでしょうか。
■城山の経験
IPOにはいろいろなやり方があるので、
ここは自分が経験した不動産ファンドのIPOについて、なるべく簡単に。
「IPOしよう!」
と会社のおじさんたちが決めてから、
実際に上場ができるまで、
だいたい1年位はかかると思います。
まずはファンドを運用するAM会社を作って、
ファンド運用に必要な人材を集めます。
それからファンド設立登記をします。
ファンドに組み入れる不動産の査定が
始まります。
ここは不動産鑑定士の経験と知識が活かせるのではないでしょうか。
アクイジションですね。
アクイジションの詳細はまた今度。
組み入れる不動産の総額が決まれば、
借入金のボリューム、
新規上場にて調達する資金、
1口当たりの配当の利回りを
どれくらいにするか、
などのスタディが始まります。
証券会社と毎週打ち合わせです。
上場申請するためには、
法定開示書類を作る必要があります。
■法定開示書類
話題の有価証券報告書とか、
有価証券届出書
ファンドの規約
投資方針
借入方針
その他
これがなかなかのボリュームです。
もちろん、
他のファンドのコピーを編集したり、
弁護士についてもらっての
ドキュメンテーション作業なので、
全部自分でやるわけではないです。
■弁護士は使い倒す
城山はこのドキュメンテーションが
結構好きでした。
弁護士先生の文章編集能力、すごいんですよ。
こいつら、いつ寝てるんだろう、、
っていうくらい働いてくれます。
そりゃ高給取りにもなりますわ。
弁護士事務所って、
名前が長いじゃないですか。
たとえば
「アンダーソン・毛利・常松法律事務所」
とか。
長いわ。
なので各事務所の略称がありますね。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所は「AMT」
長島・大野・常松法律事務所「NOT」
西村あさひ法律事務所は「N&A」
森・濱田松本法律事務所「MHM」
■IPOのタイミング
これは自由に選んでいいのですが、
例えば年末年始とか、お盆とか、
クリスマス休暇の時期とかは投資家も
休みなので、避けたほうがいいですよね。
投資家の今年の予算を使い切ってると、
投資したくてもできないので、
年度末も避けたほうがいいです。
でもそんなこと言ってると
「いつ上場するんだ」
って話になるので、
エイヤッと時期を決めるファンドもいると思います。
■IPO
ある例として、
IPOで資金調達し、借入で資金調達し、
物件取得まで、
全部同じタイミングでやっちゃうパターン
があります。
これめっちゃ大変ですね。
みんな大忙しです。
すべてが数日で終わります。
または、
親会社が株式50%を入れて、
残りの50%を借入して物件取得
というパターンもありますね。
この場合、すでに運用は始まっていて、
親会社が持っている50%の株式を
マーケットで販売するというやり方なので、
ゆっくりじっくりやることができます。
なお数字は全部仮定のものです。
■城山のファンドは
「親会社が株式50%を入れて、
残りの50%を借入して物件取得」
のパターンでした。
なので、
親会社の株式50%をいかに高く売るかが
ファイナンス担当者と証券会社の
至上命題でした。
■ケーススタディ
わかりやすく説明するために、
資産総額100億円のファンドだとしたら、
保有不動産は100億円です。
借入50%で借入総額50億です。
自己資本50%だとしたら、
親会社の投下資本も50億ですね。
この親会社の50億円は、
上場前ですが、株式と交換します。
親会社は50億円分の株式を
保有することになります。
この親会社の投下資本50億円ですが、
株式1口当たり10万円と交換すると、
親会社には5万口が譲渡されますね。
この10万円を、
新規上場時に15万円で市場で売却できれば、
差額の5万円が親会社の上場利益ですね。
差額5万円 ✕ 保有株式5万口 = 25億円
上場って、
不動産って、
儲かるのですね。。
持ってるお金と、
持ってる不動産を子会社のファンドに入れて、
上場するだけで25億円
入ってくるわけです。
まさにゼロ・トゥ・ワンですね。
錬金術とは
こういうことを言うのではないでしょうか。
■IPO時のIR
前回IRについては説明しましたね。
証券会社にアポを入れてもらって、
国内国外、都内地方と駆けずり回ります。
「新規上場するから株買ってくれー!」と。
生命保険会社
信託銀行
投信投資顧問
信金・・・
あらゆる投資家です。
1日5コマ ✕ 30日
くらいのイメージです。
結構激務ですね。
■証券会社
証券会社は、投資家訪問時、毎日ほぼアテンドしてくれます。
毎日おいしいお昼ご飯をごちそうしてくれます。
都内だと、だいたいクルマで移動して、
投資家to投資家、という感じで、
我々の負担を極力ないように配慮してくれます。
手数料3%のためにです。
証券会社は毎日、
「どの投資家が何口くらい買いそう」
「どの投資家が一口15万円で買いそう」
などと集計してくれます。
先程の例だと、
5万口を販売しなきゃいけないですが、
需要を増やして一口あたりの単価を
15万円にしなければならないので、
最低でも7万口くらいまで需要を上げる必要がありますね。
うまく需要を集められたら、
いよいよ上々です。
■祝上場!
ファンドの役員から従業員まで全員が
東京証券取引所に集まり、
記念写真を撮影したり、
東京証券取引所のみなさんに
拍手してもらったり。
この1年ちょっとの苦労が報われる瞬間ですね。
城山の場合は、
親会社にもちゃんと利益が出て、
かつ配当利回りも狙ったとおりに
設定できたので、
悪くないディールだったと思います。
■おわりに
さて10回めくらいで
ファイナンス担当者編は終了したいと思います。
今日はここまで。