こんにちは、城山です。
不動産鑑定士多しと言えど、
不動産ファンド
その仕組
ボンド
PO
アクイジション
エグジット
アセットマネジメント
私ほどAMのすべてを経験し、
精通している不動産鑑定士はいないでしょう。
前回からの続きです。
■長期借入金
まず、短期借入金は、
借入期間が1年以下、
つまり借りたタイミングで、
返済期限が1年以内にくるものを言います。
長期借入金はその逆で、
借入期間が1年より長い、
つまり借りたタイミングで、
返済期限が1年以上先のものを言います。
■REITの長期借入金の金利決定
借入実行が月末だとしたら、
その2日前に借入金rが決定します。
今月だと30日の2日前にあたる
28日の午前10時に決まります。
トムソンロイターの特定の画面に
午前10時に表示されるスワップレートに、
スプレッドを乗せた数値が
借入金利となります。
です。
なぜか午前10時ちょうどに
表示された画面のスワップレートです。
これは慣例というか、、ナゾです。
まあ9時から普通の事業会社は
仕事が始まりますし、
いろいろと考えた上での時間なのでしょうね。
知ってる方がいらしたら教えてください!
■スワップレートについて
スワップレートは、
自分でコントロールできません。
市場が決めます。
ファイナンス担当者は、
市場を観察し、
「いつのタイミングで借入実行すれば、
スワップレートが比較的低いか。」
を予想します。
並行してファイナンス担当者は、
金融機関の担当者に、
接待をし、
ファンドの正しい情報を提供し、
その情報を丁寧に説明し、
日々コミュニケーションを取り、
細かな連絡を絶やさず、
営業マン並みの仕事をします。
不動産鑑定士試験勉強で学んだ成果を
活かすときです。
経済学で学んだマクロ経済学が、
ファイナンス担当者には必須です。
■スプレッド(上乗せ金利)
スプレッド、つまり上乗せ金利は、
金融機関が評価するそのファンドの実力です。
よいファンドであればあるほど、
この上乗せ金利が少ないです。
よいファンドとは、
いろいろと評価指標はありますが、
貸し倒れリスクが少ない、
保有資産の質が良い、
成長している、
経営者の人柄が良い、
もっと借りてくれそう、
いろいろです。
このスプレッドをいかに下げるかが、
ファイナンス担当者の能力です。
不動産鑑定士として、
ファンドの内容を深く理解していると、
金融機関の担当者から、
「あのファンドの担当は賢い」
と評価されて、
行内調整を上手に進めてくれる可能性
があります。
あと、
ファイナンス担当者でなくなっても、
優秀なら、その後の関係が続きます。
「あいつはあの会社で出世するだろう」
と見込まれれば、
その後も金融機関から連絡が来て、
たまーにランチとかします。
■天下の日本ビルファンド投資法人の借入
https://www.nbf-m.com/nbf/release/files/20181010_%E8%B3%87%E9%87%91%E3%81%AE%E5%80%9F%E6%8F%9B.pdf
上のリンク先は日本ビルファンド投資法人の
借換のプレスリリースですが、
不思議に思いませんでした?
借入先の金融機関は別々、
金額も別々なのに
なぜか金利が全部同じ。
なぜでしょうか。
■銀取とは
まず、どんな事業会社でも、
金融機関から融資を受けるためには、
「銀取」を締結する必要があります。
銀行取引約定書です。
銀行取引約定書とは、
融資取引を新しく始める際に、
貸す銀行と、借りる会社の間で締結する誓約書で、融資取引全般の細かな取り決めが
書かれています。
内容を一言で言うと、
「借りたら返せ。
金利が払えなくなったら即返せ。」
ですね。
■融資合意書
銀取を締結する前提で、
REITはさらにもうひとつ、
大事な書面を、
全金融機関と締結します。
それが「融資に関する合意書」です。
「コベナンツ」って聞いたことありませんか?
コベナンツとは、
融資の契約を締結するさいに、
契約書に記載することのできる
一定の特約事項のことである。
融資取引におけるコベナンツとは、
「情報開示義務」
「財務制限条項」
「担保制限条項」
などがあり、
これらの条項が守られなかった場合には
その時点での資金の全額返済や
金利優遇の取り消しなどが
ペナルティとして課される。
■情報開示義務
REITは各ファンドのHPなどに、
資産運用報告
など、法律で定められた資料を
開示しています。
開示資料(IRライブラリ)|IR情報|ジャパンリアルエステイト投資法人 https://www.j-re.co.jp/ja_cms/ir/library.html
これ、ファイナンス担当者が
かなりのページを作るんですよ。
でも大変勉強になりました。
読むより作るほうが勉強になります。
「情報開示義務」とは
上記の法律で定められた書類はもちろん、
運用資産の鑑定評価書
PMレポート
エンジニアリングレポート
毎月のキャッシュフロー表
「包み隠さず全部提出しなさい」
という意味です。
鑑定評価書とか結構分厚いじゃないですか。
保有物件が多いとマジで大変です。
少し前のくそ金融機関は、
「紙でお願いします」
とかいって、全部印刷して提出していました。
CDに焼くからそれでいいやん!
圧縮フォルダで送信するからそれでええやん!!
読んだら絶対シュレッダーするやん!!!
何度思ったかわかりません。
金融機関はまだまだ古かったです。
いまはさすがに多少改善していると思います。
■「財務制限条項」
REITの重要な指標として
LTVとDSCRがあります。
LTVは、Loan to Valueの略です。
LTVとは「総資産有利子負債比率」と言われ、
REITの借金比率を表す指標です。
LTVが高いほど借入金の比率が高いため、
リスクが高いREITであると判断されます。
オモテのLTV算出方法ですが、
自己資金0円(いわゆるフルローン)で投資した場合、LTVは100%です。
全額自己資金(借入金0円)で不動産を購入した場合のLTVは0%です。
簡単ですね。
LTV = 有利子負債 ÷ 総資産 × 100
借入金600万円、エクイティ400万円を使って1,000万円の物件を購入した場合、LTVは60%です。
オモテがあればウラLTVもあって、
時価LTVというものがあります。
LTV = (有利子負債+敷金・保証金-敷金・保証金見合い現預金)÷ (資産総額(鑑定評価額)-敷金・保証金見合い現預金)
鑑定評価額=時価ですから、
時価LTV
というやつですね。
鑑定評価の知識がここでも活きるわけです。
鑑定評価額が変動すれば、
鑑定士なら理由がちゃんと説明できます。
普通のファイナンス担当者にはできません。
REITのLTVはだいたい
50−60%
と言われますが、
この時価LTVが、例えば60%
を超えるとどうなるか。
金融機関から
「気をつけろよ。増資(PO)でもしとくか?うん?」
と言われます。
コベナンツで定められたLTVの
上限を超えたときに発生します。
POすると、LTVは下がります。
わかりますか?
LTV = 有利子負債 ÷ 総資産 × 100
借入金600万円、エクイティ400万円を使って1,000万円の物件を購入した場合、LTVは60%
でしたね?
POすると、エクイティが増えます。
単純計算ですが、
エクイティを100万円増やして借入金100万円を返済すると、
借入金500万円、エクイティ500万円を使って1,000万円の物件を保有しているので、LTVは50%ですね?
これを放置してPOせず、
二期連続して60%を超えたままだと、
金融機関から
「はいおわり、
今まで無担保無保証で貸してたけど、
全部担保に入れろ?
んで、だれか保証人つけろ。な?」
と言われます。
REITの借入金は、
基本、無担保無保証です。
https://www.nbf-m.com/nbf/release/files/20181010_%E8%B3%87%E9%87%91%E3%81%AE%E5%80%9F%E6%8F%9B.pdf
■おわりに
今日は長くなってしまいました。
次回はDSCRの説明から始めます。
大丈夫、
不動産鑑定士の知識は
ファイナンスでも活かせます。
「アクイジションとか運用とか、
そっちの楽しそうな話をしてよ〜」
という声が聞こえてきそうですが、
ファイナンスの知識無くして
不動産は語れません。
楽しみにしていてください。
今日から!
銀行のことを銀行と呼ぶのはやめましょう。
金融機関といえば、それっぽく聞こえます笑